コラム 第3話:緊急事態宣言解除後も、従業員のメンタル不調にご用心!
5月25日に5都道県に対する緊急事態宣言が解除されました。
在宅勤務の状態から、徐々に出社を再開する企業も増えていくでしょう。
これまでの仕事の遅れや損失を早く取り戻さなければならないと焦りを感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
とはいえ、この3か月間、私たちは外出自粛を求められる生活に、自分たちの考え方や行動を適応させようとしてきましたので、ここで自粛が解除されたからといって、すぐにまた元通りの意識やモチベーションで働き始められるわけではありません。
SNSでは緊急事態宣言の解除後すぐに「出社鬱」というキーワードの投稿が非常に多く見られました。
出社に対して不安や憂うつを抱えている人は相当多くいることが分かります。
誰もが、生活リズムを整えたり、低下していた体力を取り戻したりするなどの「助走の期間」を必要としています。
また、新型コロナウィルスの感染が拡大する前の「これまでの働き方」に社会全体がそっくりそのまま戻れるわけではなく、「新たな働き方」を模索していくことになります。
社会全体の動向を見ながら、会社も個人も自分なりの変化と適応を模索していかねばなりません。
ある程度の方向性がつかめるまでには、やはり時間が必要です。
経営者および管理職の方々は、少なくとも最初の1〜2カ月間は「助走の期間」だと思って、過度なプレッシャーを急激にかけないよう配慮できるとよいでしょう。
在宅勤務が終了し出社する生活に戻る人が直面する心理的・身体的課題をまとめましたので、ご参考にしてください。
在宅勤務の期間中は、通勤時間がなくなった分、普段よりも寝る時間が遅くなり、朝起きるのも遅くなったという方は少なくありません。
時間の使い方に余裕ができたのは良いことですが、出社が始まると生活リズムの立て直しが必要になります。
夜うまく寝つけず体調が不安定になる方もいますので、注意が必要です。
自粛期間中もマスクをしてジョギングをしている人の姿を多く見かけましたが、運動不足になっていた方も多いのではないでしょうか。
運動不足により体力が低下して、通勤の移動だけでも疲れを感じる方は多いはずです。
体力を取り戻すには一定の時間がかかりますので、ストレッチや筋トレ、ウォーキングなど、できる範囲で毎日意識的に続けることが大切です。
私たちはこれまで毎日、驚くほど多くの時間とお金と気力を使い、仕事で人に「見られてもいい」自分を作り上げていました。
毎朝、ワイシャツ、ネクタイ、スーツ、革靴、ハイヒール、腕時計を身につけ、毎朝、ヒゲを剃り、お化粧をしていました。ときどき服にアイロンをかけたりクリーニングに出したりもしなくてはいけませんでした。
在宅勤務中はオンライン会議のときだけスーツをはおり、下はジャージのまま参加していた人も、出社が始まるとそうはいきません。
改めて「見られてもいい」自分づくりのために、時間とお金と気力を使う生活に戻らねばなりません。
「その方が気持ちが引き締まって仕事に集中しやすくなる」という人もいますが、そうでない人も少なくありません。
在宅勤務中は「コミュニケーションがとりづらい」と感じる一方で、「苦手な人とのコミュニケーションが減って快適」と感じた方も数多くおられました。
在宅でも仕事が回せていたのに出社を求められるという人の場合は、なまじそれで支障がないことを知っているだけに、今後対面でのやりとりが増えると、今まで以上にストレスを感じることも考えられます。
職場に苦手な人がいないという人でも、1日8時間以上、他人といっしょに働くのは、それなりに気をつかいますので、しばらくの間は疲れを感じやすいでしょう。
どういうわけか、日本は感染が非常にうまく収まってきています。
それはとてもありがたいことです。
「もう大丈夫だろう」と楽観している人も増えてきました。
そのような楽観は決して悪いものではありません。
ある程度楽観的に考えられる能力は、心の健康にとって重要な要素です。
このような「健康な自己愛」がなければ、私たちはいつまでもおびえ続け、経済活動は停止し、心の健康がいっそう損なわれてしまうことでしょう。
ここで大事なことは、自分がこのような楽観的な考え方に至ったからといって、それを他人にも押しつけてはならない、ということです。
基礎疾患を抱えている方は、「感染したらどうしよう」という不安を他の人よりずっと強く感じています。毎日電車に乗るたびに強い不安を感じます。
また、家族に医療従事者や介護従事者など、新型コロナウィルスに感染するリスクの高い人がいる方は、自分が感染する不安とともに、自分が家族を介して感染を広めてしまう不安も抱えています。
このような方々の不安はこれからも長く続きます。
おそらく今後、社会全体が安堵と楽観に包まれるなかで、「まだコロナを怖がっているのか」、「まだマスクなんか着けているのか」などと言われて傷つく人が出てくることでしょう。
少なくとも現段階では、この新型コロナウィルスの感染が世界的にどうなっていくのか、確かな見通しは立っていませんので、この感染症に対する感じ方・考え方・個人の事情もそれぞれであることを心に留めておくことが大切です。
* * *
以上、在宅勤務の状態から再び出社が始まった方々について書きましたが、新人社員や転職者、異動者のように、緊急事態宣言の解除後に初めてその職場に出社するという方もおられます。
職場のことも仕事のやり方も分からない状態でさまざまな変化への対応を求められますので、このような方々についても同様に、新しい生活に慣れていくことができているかどうか、時々様子を確認できるとよいでしょう。
気がかりなご様子の従業員の方がおられましたら、個別にサポートいたしますので、弊社までお気軽にお問い合わせください。